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榛名山の麓、上郊村保渡田。
農家の長男として生まれながらも、伯父の深い愛情のもとで少年期を過ごした土屋文明。

平成2年その生涯を終える。享年100才。最後まで自分の歌碑建立を拒んだ彼が、最後にして許した歌碑が故郷、保渡田の「群馬県立土屋文明記念文学館」の庭に、まるで天の文明を見上げるが如く建っている。

「青き上に
 榛名をとはのまぼろしに
  出でて帰らぬ
   我のみにあらじ」

東京南青山の書斎を復元した部屋の南窓からは、東京からそのまま木々を移植した「方竹の庭」が見渡せる。
季節の折り、今でも庭の梅や柿・橙などが実を付けると、職員の手によって、東京の肉親に送られるそうだ。

文明はこの部屋で、40年近く万葉集研究や「アララギ」選歌に取り組んでいたという。
部屋の応接テーブルの上には、飲みかけのミルクティとケーキが、主人の執筆の一区切りをまっている。
山歩きの好きだった彼のキャラバン靴。
万葉集を通じ、詩を感じる日本人の心をも散策していたのだろう。彼の心は、いまでもどこかを散策しているに違いない。
群馬県立土屋文明記念文学館

【住所】〒370-3533 高崎市保渡田町2000
【TEL】027-373-7721
【駐車】無料
【休館】火曜日(祝日の場合は翌日)
 年始年末(12月29日〜1月3日)
【URL】http://www.bungaku.pref.gunma.jp/
記念文学館から、車で5分程のところにある、「菓子処 海老屋」。決して広い店構えでもなく、店番は女将さん。素朴で実直な風味の菓子も、一つ一つ若旦那の手作業。
記念文学館を訪れた際は、ここの「文明最中」を是非土産にしては、いかが。
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