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与謝野晶子が、やがて夫となる鉄幹と出会う頃、彼女には登美子という恋敵がいた。しかも鉄幹は、二番目の妻との間にも子供までいる。

正妻という共通の障壁に対し、晶子と登美子は、やがて互いに共感し合い、登美子と鉄幹と3人で京都に旅行に出かけたりもしている。
夜更けに目を覚まし、窓の外に目をやる晶子の耳に届いたのか、それとも空耳だったのか、
 「ひとまおきて
  をりをりもれし君がいき
   その夜しら梅だくと夢見し」

歌人、俵万智は、こう解釈する。
― 「晶子の恋は本物だった。結論をいえば、彼女は死ぬまで鉄幹を愛しつづけた。 いや、愛というような穏やかな表現よりも、惚れつづけた、といったほうが、 ぴったりくるかもしれない」 ―と。
“愛”などという、大それた気追いではなく、純粋に惚れた乙女心は、鉄幹の没前後にも伺える。まさか、12人の子を産み育てた母とは思えぬ程の、感性の高ぶりすら感じる。
生涯、妻や、子供達の母でいるより、一人の男性を恋い思う“女”で居たかったに違いない。
ここ「三国路与謝野晶子紀行文学館」では、そんな、夫に惚れぬいて、しかし、いつも孤独な気持ちを綴ってきた、甘辛くアンニュイな晶子の生涯に触れることができる。
三国路与謝野晶子紀行文学館
「椿山房」
【住所】〒379-1403 群馬県みなかみ町
猿ヶ京1175
【TEL】 0278-66-1110
【開館】9:00〜17:00
【休館】毎週水・木曜
【駐車】無料
【URL】 http://www.sarugakyo.net
秋風の吹く頃、ここの「カフェ・チンチルベ」で、温かいミルクティでもまぜながら、恋する乙女に戻ってみるのも良いかもしれない。
夫・鉄幹の詩歌の隣りで、弾けるほど幸せそうな彼女の眼差しや吐息が、感じられるに違いない。
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