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あかぼり蓮保存会 会長

金子 和雄さん


日中平和友好大使蓮

「まっさか きれいだね〜。と言われるのが一番うれしいです。」

蓮の花が咲いてる。
香ることなく そそと咲いてる。
天に向かって すうっと咲いてる。

葦が生い茂る2500uの天幕城の外堀跡を改良し、蓮の苗を10本植えたのが5年前。
当時、地元老人会の会長を務めていた和雄さんは、中国帰りの知人から蓮の種と苗を譲り受ける。これが、日中平和友好大使蓮。
老人会員に呼びかけボランティアを募る。
荒れ地だった外堀跡は、とうてい花など咲く環境ではない。
「蓮の花でいっぱいにしよう」との呼びかけにも、ムダ骨と決めつけ誰しも実らない努力を拒んだ。

「蓮の花なんて無理 無理。」…………と ひとりの人が。
     今日は 一日草刈り
「こんなところに咲くもんかい。」…………と もうひとりの人が。
     昨日終わらなかった 草刈り
「花なんて咲かないよぉ。」…………次のひとり。
     葦を抜く
「絶対 花は咲かないね。」…………その次のひとり。
     堀を耕す
「やるだけムダだ。」…………その次の次のひとり。
     水を引く
「咲きっこない。」…………みんなが。


数えきれない程の悲しい言葉を聞いた。
それでも毎日堀へ向かう。
和雄さんの挑戦を影で支えたのは奥様のマス子さん。
マス子さんは、毎朝真っ先に堀に行き
「どうか1つでいいから花が咲きますように」と手を合わせ祈る。
「最初の年は、なんだかんだと不慣れな仕事だったから、苗の植え付けの時期が遅れたもんだから、花が咲いたんも遅かったんです。みんなが言うように、こりゃぁだめかなと思いましたよ。そしたら、8月10日に咲きました。(笑顔)」
「あぁ〜 よかった」としみじみマス子さん。
おもいとは。
「子どもを育てるのとおんなじです。根がついたかな? 芽は伸びてくれるかな? 虫は付いてないかな? 藻退治しなければなんないなぁって、毎日堀にいきました。みんなが反対する中で一人頑張っているおじいさん(和雄さん)のためにも、1つでいいから花が咲いてくれますようにと、その一心だったんです。」
そしりの中の希望を蓮の花に求めていた。
「いや いや おばあさん(マス子さん)が花が大好きだから、どうしても咲かせてやりたかったんです。」
二人のおもいは5年たった今年【記念イベント】となって実を結ぶ。
老人会からスタートしたボランティアは保存会を結成するに至る。会員も50代〜70代の男女で22名になった。
「まっさか きれいだね〜。と言われるのが一番うれしいです。その一言がありがたいです。」
うっすらと涙をうかべるマス子さんの隣りに、目を細めて和雄さんがそっといる。
むかし むかし。
ちょびぃっと むかし。
赤堀の磯というところに おじいさんとおばあさんがすんでいました。
村でも評判のなかよし夫婦です。
ふたりは にこにこと毎日おだやかにくらしていました。
ある時 お殿様が
「みごとな蓮の花を咲かせてみせよ。」
と中国から友好のしるしにおくられた蓮の世話をするようにふたりにいいつけます。
花が大好きなおばあさんは おおよろこびです。
でも おじいさんは蓮の育て方をしらないので 途方にくれました。
よい肥料があるときけばでかけて行き。
藻たいじのよい方法があるときけばでかけて行き。
それはもう 蓮のためにいっしょうけんめいでした。
おじいさんのがんばる姿を見て おばあさんは
「どうか 1輪でいいから蓮の花を咲かせてください。」
と 神様にお願いしました。
毎日 毎日 手をあわせて神様にお願いしました。
でも なかなか蓮の花は咲いてくれません。
「もう 咲かないかもしれない」
と おばあさんはあきらめかけていました。
でも おじいさんはあきらめず 草取りをしたり 虫取りをしたりと世話を続けました。
ある朝 1つ目の蓮が すうっと静かに花をひらきました。
それは それは大きな花です。
すると 堰を切ったようにつぎからつぎへとたくさんの花が咲きました。
「おじいさん きれいだね。」
「おばあさん よかったなぁ。」
と ふたりは手をとってよろこびました。
蓮の花の噂をききつけ 遠方からたくさんの人が見物にやってきて
「みごとだ。」
「立派なもんだ。」
と口々にほめます。
お殿様もたいそうよろこび ふたりにほうびをとらせることにしました。
「ほうびはいりません。それよりどうか 足の不自由な人や腰の悪い人でも
近くで蓮の花をみられるように 木道を整備してください。」
と お願いしました。
お殿様は遠慮深いふたりの願いをかなえることにしました。
くるとしも くるとしも蓮は立派な花を咲かせ 
いつしか赤堀の磯は花の村となって花好きの人でいっぱいになったとさ。
おしまい。
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