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FIAマスターズスイミング選手権大会
90歳以上95歳未満 世界新記録保持者

高橋 誠治さん


50メートル平泳ぎ 1分00秒75 世界新記録
リレー360歳区分 4分13秒   世界新記録

「ライバルは50歳の主婦です。一昨年追いつかれ、去年抜かれました。(笑)」


  2006年3月4日 383名の伊勢崎市体育功労者・優秀選手賞受賞者の名前が呼ばれる。その中でひときわ大きな歓声が上がっていたのが、FIAマスターズスイミング50メートル平泳ぎ90歳区分の世界記録保持者、特別優秀選手個人賞の高橋誠治さんの名前が呼ばれた時でした。
  大きな拍手とともに「こんな身近に世界記録保持者がいたなんて、伊勢崎市民の一人として、とても光栄です。」と市長の祝辞。
  「世界記録をだしたなんて実感はありません。だだ好きで泳いでいるだけです。ギネス?そんなことは考えたことありません。抜きつ抜かれつの記録です。この年になるとライバルが減っていくんです。(笑)気づくと現役で泳いでいる人の方が少なくて。それよりもね ・・」

身を乗り出し目を輝かせて語る。
「それよりもね、リレーの360歳区分で2005年5月に世界記録をだしたんですよ。僕より3つ上の先輩(自由)と西宮在住の人(バタフライ)、女性(バック)が一人、それに僕(平泳ぎ)。4人の混合チームです。ねェ、すごいでしょッ。この記録は僕ひとりが頑張っても出ません。4人それぞれが頑張った結果です。練習や日々の健康管理やなんやかや。」
90歳以上の選手を4人集めるということの難しさ。現役で泳いでいるということのすばらしさ。まさしく長寿国日本の誇りだろう。日本で初めての世界記録挑戦者達は、日本で初めての世界記録を誕生させた。
「僕個人の記録より、そっちの方がずっとずっとすごいでしょう?」
マスターズ水泳大会では常に3位以内に顔を出す。75歳の時には日本記録をだして見事優勝。80歳の時も同様。85歳でその優勝は世界記録となる。身近にいた世界記録保持者の武勇伝は語りつくせない。

水泳を始めるきっかけはなんだったんだろう?                       
幼年期を山形県米沢市で過ごす。
「泳ぎは川で覚えました。当時はプールなんてなかったですからね。中学生になってからは、先生が沼に連れて行ってくれました。縄を張って、簡易プールを作ってくれたんですよ。そこで泳いでいました。勿論、夏だけですよ。(笑)酒田まで泳ぎに行ったこともあります。高校生(現・山形大学)になって、はじめてプールで泳ぎました。」
当時、山形県内には25メートルのプールがたったひとつしかなかった。歩くよりも早くスイミングスクールの温水プールで泳ぎを覚える現代っ子は、80年・90年後には皆、立派な記録保持者になれるのだろうか?英才教育や環境で生まれ得るものは、ほんのわずかでしかないことを、あらためて思い知らされる。

40代になって病気をする。夏は水泳、冬はスキー。ひたすら身体を鍛えた。勤労者大会、全国大会に出場することもあった。いつしか職場に夏用プールができる。もちろん彼のために。もともと身体能力が高く、身体を動かすことが好きなんだろうと思う。いわゆるスポーツマン。
「ある時スイミングスクールの仲間がね、といっても高校生なんですが、『おじいさんのタイムは記録ものだよ。これならマスターズ大会にでたら賞がとれるよ。』って言うんです。(笑)エー、本当かな?って。半信半疑でしたけど、それじゃぁって。その気になったんですよ。」

挑戦者となる。
永い眠りから目覚めた闘争心は、品格漂う笑顔をともなって泳ぎだす。この時すでに、日本人男性の平均寿命に有に達している。一般的には、足・腰が弱り、目や耳にも支障をきたし、生活習慣病に悩まされていてもおかしくない。もちろん、家族からは御身をおもんばかって、いらぬ干渉を受けるはずである。
「どっこも悪いところはありません。週2回2時間程度の練習をしています。練習と言うよりも、泳いでいます。」
「ライバル?」しばらく考えてから
「ライバルは50歳の主婦です。一昨年追いつかれ、去年抜かれました。(笑)」あっけらかんと言う。
「水泳をしていて辛かった事なんて、ひとつもありません。欲を出さずに時代の流れるままでしたから。」
もう“理由”なんてどうだってよくなってる。
泳ぐ理由、賞を取る理由、記録に挑戦する理由。むしろ、そんなものは、はじめから存在しないのかもしれない。今の若者はどうだろう?言い訳としての“理由”を先に用意している。恥ずかしいことだ。新記録をだすために一生懸命に泳いで、評価され、名誉をもぎとる。が、それを成し得なかったとき、集中力に欠けた、体調不良でおもうように練習が出来なかったと、もっともらしい言い訳を並べる。恥ずかしいことだ。
おそらく、彼が彼らしく笑うには生い立ちや経験ではない。【こころ】が豊かなのだろう。だからこそ、誤魔化さず自身の道をまっすぐ歩めるのだ。

「次の目標? 夢って言ったほうが正しいですね。95歳で世界記録を作ることです。」と笑顔。笑顔。
加齢とともに重力に抵抗しがたい体型は、ある程度仕方ないとしても【こころ】だけは常に現状維持出来るものだと深く思った。夢を語るのに年齢は関係ないと教えられた。
5年後、またお逢い出来たらどんなにうれしいことだろう。
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