そう言われたのがきっかけと話す、「桐生技研」の中村社長。「なにくそ」、と始めたワカサギ用電動リールの製作。 ところが、一筋縄ではいかない。きっちりとした「物造り」が災いして、ゴツくなってしまったり、所詮口コミレベルでは、商業ベースにすら乗らない流通。つまずき。 半ば諦め掛けていたところに、劇的な一本の電話が入った。 「おたくの電動リール、30台くれないか、、、」
今や、ワカサギ釣人の間では知れ渡った「桐生技研」には、こんな過去もある。 社長宅の居間には、今でも開発中の電動リールや竿が、所狭しところがっている。
「その人は、ウチのリールを野尻湖に持っていったのね、乗合船でやろうってことで。 しかも、ばら撒いた仲間を交替で、他のお客様に紛れ込ませてね。深さ、30mはあるからね。手巻きじゃしんどい訳ですよ」 で、「その電動は、どこのだ」ってことになる。
そうやって、県外ではだんだんと知名度も上がってきたのに、地元群馬に帰ってくると誰も知らない。
県外ではチカ(北海道産)が主流だから、深いところから釣り上げられる電動リールが重宝される。 けれど群馬県内は純粋種がほとんど。3mも巻ければいい。聞きあきた“言い伝え”。「電動は無用」
だったら、赤城で電動リールに合うワカサギ竿だ。 「3年程前から、新しい竿の開発を始めました。それも県内の純粋種の表層向け用に特化した、電動リール専用の竿です」
ワカサギ釣果は、何も「手釣りの名人」だけに許された特権ではない。 これからはファミリーやビギナーにも釣れる道具や環境も整えていかなければ、観光資産価値も減衰してしまうのではと、社長は危惧する。 事実、ほとんどの観光釣場が危機的状況にさらされている。
更に、社長は続ける。 「釣れなきゃ、リピータは減る。ファミリー客も来ない。観光資産価値は減る」 「どうすれば釣人が集まるか、リピータが増えるか。地方自治レベルで、産官二人三脚で真剣に取り組む過渡期に来ている」と。
赤矢湖に移動桟橋を作って、誰でも安全な湖上釣りが出来るよう提案したり、家庭排水への高純度排水への提案など、各界にそのガンコ顔知らぬ者無し。 「地元企業様に、精力的にご協力頂いています。群馬の地元企業体が作ったリールで、県内の釣場に、県内外から釣り観光客が来ていただければ、地場産業復興事業も、もっと活用できるのに」 「ファミリーで遊べるワカサギ釣り。最高だと思うんだけどな」 彼の脳裏には未来予想図が明確に描かれている。