東(ひがし)吾妻町 東(あずま)。 日本百名水の一つ、「箱島湧水」。 名湯「草津温泉」への途中、こんな名水の湧水があることをご存知だろうか。
普通「湧水」といえば、神社の手水舎(手を清め口をすすぐ)の竹管から注ぐ流れや、岩間からためらいがちに湧き出る水量を想像してしまうが、ここは、それを吹き飛ばすほどの水量。 箱島不動尊の祠の足元より、3万t/1日の湧水量がある。湧き出す流れは、すぐに滝となり、岩を穿つ。
カエデの落葉の絨毯と、こけ生す黒い岩肌のあいだを、「ざざざざ」と流れ落ちる滝の飛沫に、思わず引き込まれてしまう。
我が子を慕って、榛名湖に入水した母親(木部宮内小輔「北の方」)。 やがて、榛名湖に大蛇が棲むといううわさがながれ、その母の位牌を榛名湖に納めたところ、箱島湧水からその位牌が浮かび上がったという。
箱島湧水の溢れる勢いは、我が子を想う母の気持ちの強さ。水の清らかさは、純粋な気持ちのあらわれ。 訪れた際には、ご利益を願い、箱島不動尊へお参りしたい。
当然、現在は機能していないが、 生い茂る自然の営みに埋もれ、ひっそりとコケ生していく石製の導水管や石垣、放水路などが、 近代遺産として残っている。
箱島湧水に訪れる際は、やはり早朝がお奨め。 あたりに立ち込めるフィドンチッド(森林浴成分)とマイナスイオン効果で、誰も思わず深呼吸したくなる。
駐車場からは数百m歩くだけなので、霧雨や小雨でも気持ちがいい。 ポリタンクや空のペットボトルは必ず持っていくこと。
1BOXカーにぎっしりとポリタンクを積んで来ていた方に伺うと、埼玉県で料理店を経営されているとか。2週間に1度、定休日を利用して水を汲みに来ているという。
焼酎の大きなペットボトルを幾つも抱えたご家族は、親戚の間で持ち回り当番で汲みに来ているとか。
見上げると、遥か上方に杉の葉。 落ちてくる雫も、落下に2秒ほど掛かりそう。
駐車場から数百mくだると、アユ・イワナ・ヤマメ・ニジマスなどを養殖している「あずま養魚場」。 特に「ギンヒカリ」というブランドのニジマスなども養殖し、刺身も美味い。 ここでは、釣りや掴み取りの後、自分で釣った魚で川魚料理やバーベキュー、宴会もできる。ホテルや料亭に卸している素材なだけに、味や鮮度は抜群。 帰路の運転が不要なら、名水で仕込んだ「不動の霊水(辛口)」で、イワナの骨酒をキュッとやるのも良い。