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東(ひがし)吾妻町 東(あずま)。
日本百名水の一つ、「箱島湧水」。
名湯「草津温泉」への途中、こんな名水の湧水があることをご存知だろうか。

普通「湧水」といえば、神社の手水舎(手を清め口をすすぐ)の竹管から注ぐ流れや、岩間からためらいがちに湧き出る水量を想像してしまうが、ここは、それを吹き飛ばすほどの水量。
箱島不動尊の祠の足元より、3万t/1日の湧水量がある。湧き出す流れは、すぐに滝となり、岩を穿つ。

カエデの落葉の絨毯と、こけ生す黒い岩肌のあいだを、「ざざざざ」と流れ落ちる滝の飛沫に、思わず引き込まれてしまう。

 

箱島湧水は、榛名山麓北側に位置する。
あまりの湧水量のため、「榛名湖と箱島湧水は地下水脈でつながっているのでは?」といった伝説もあるほど。

我が子を慕って、榛名湖に入水した母親(木部宮内小輔「北の方」)。
やがて、榛名湖に大蛇が棲むといううわさがながれ、その母の位牌を榛名湖に納めたところ、箱島湧水からその位牌が浮かび上がったという。

箱島湧水の溢れる勢いは、我が子を想う母の気持ちの強さ。水の清らかさは、純粋な気持ちのあらわれ。
訪れた際には、ご利益を願い、箱島不動尊へお参りしたい。

伝説の時代からは、遥か後の明治43年、
群馬県初のロックフィル発電ダムが、ここ「箱島湧水」に作られた。

当然、現在は機能していないが、
生い茂る自然の営みに埋もれ、ひっそりとコケ生していく石製の導水管や石垣、放水路などが、
近代遺産として残っている。

箱島湧水に訪れる際は、やはり早朝がお奨め。
あたりに立ち込めるフィドンチッド(森林浴成分)とマイナスイオン効果で、誰も思わず深呼吸したくなる。

駐車場からは数百m歩くだけなので、霧雨や小雨でも気持ちがいい。
ポリタンクや空のペットボトルは必ず持っていくこと。

季節や曜日に関係なく、水を汲みに来る方が絶えない。
手前の駐車場には、群馬県外ナンバーの車がが、およそ3/4。どれもペットボトルやポリタンクを積んでいる。

1BOXカーにぎっしりとポリタンクを積んで来ていた方に伺うと、埼玉県で料理店を経営されているとか。2週間に1度、定休日を利用して水を汲みに来ているという。

焼酎の大きなペットボトルを幾つも抱えたご家族は、親戚の間で持ち回り当番で汲みに来ているとか。

見上げると、遥か上方に杉の葉。
落ちてくる雫も、落下に2秒ほど掛かりそう。

箱島不動尊にお参りをすませ、水を汲もうとしゃがみ込むと、岩のあいだに何やら動くかげ。
沢蟹だった。
水の清らかさをしめす、自然のバロメーターが、両手を上げて出迎えてくれた。

駐車場から数百mくだると、アユ・イワナ・ヤマメ・ニジマスなどを養殖している「あずま養魚場」。
特に「ギンヒカリ」というブランドのニジマスなども養殖し、刺身も美味い。
ここでは、釣りや掴み取りの後、自分で釣った魚で川魚料理やバーベキュー、宴会もできる。ホテルや料亭に卸している素材なだけに、味や鮮度は抜群。
帰路の運転が不要なら、名水で仕込んだ「不動の霊水(辛口)」で、イワナの骨酒をキュッとやるのも良い。

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