竹久夢二が描きたかったのは、 当時の女性が感じていた生活の喜びや悲しみ。
そして土屋文明が詠みたかった、芥川龍之介にも影響を与えたともいわれる刹那的・即物的描写で「アララギ」に代表される短歌。
そんな明治から昭和までの切ない絵画と詩のコラボレーション、 そして美味しい逸品をちょびっとナビゲート。
さらに付け加えるように、妻は言う。竹久夢二を知る人は、夢二のことを”夢二さん”って呼ぶらしい。 花々しい受賞や名誉を一切排他し、ある意味アウトロー的な、独特の芸術家人生、と言うより、彼の個たる人生観や作品に対して共感する意味で、ファンは”夢二さん”と呼んでいるのだ。と。 そういえば私にも、あったなぁ。と、古い記憶が蘇る。 あれは高校時代。母校の先輩で、17歳でエレクトリックギターで感電死された、山田かまち先輩。 実際に会ったことのない先輩に、”先輩”の呼称を付けたくなる気持ちと似たものがあるのだろうと、ふと思う。 私はといえば、祖父の影響も有ってか、絵よりも短歌が好き。読んで伝わるリズムが心地よい。どこか埃の匂いのしそうな、あの雰囲気もたまらない。 そういえば、県内にあるのに、土屋文明記念館も、しばらく行っていない。
それじゃあと言うことで、今回は妻に誘われるまま、のんびり”夢二さん”の記念館と、土屋文明記念文学館を回ってみる。
JR渋川駅までは30分足らず。舌鼓を打つうちに着いてしまった。
「大正ロマン夢の館」は、”夢二さん”の作品を二ヶ月毎に展示内容を替えているという。しかもレプリカは一つもないとのこと。ものすごい蔵書の数だ。
代表作「黒船屋」にちなんだ「夢二黒船館」では、当時の器やあかり、人形など、大正ロマンを満喫した。
別館「音のテーマ館」では、100年以上前の欧米のアンティークオルゴールの演奏を、20分おきに聞かせてくれる。 ”夢二さん”と同じ時代の音色が心地よい。 アンプもスピーカも通さない、アコースティックな音色は、耳でなく心に響く。その音色に妻も同じように酔いしれたようだ。
伊香保の泉質には鉄分が多く、源泉では赤茶けた錆色の「湯の花」がみられる。「湯の花饅頭」の名前の由来も、皮の色が似ているためだ。
もう一つ押さえておきたいのが、文学館二階にある「レストラン野花(のか)」。ピザとスパゲティが美味しい。 天気の良い日はガラス張りの壁から、赤城、榛名、浅間、妙義、遠くは八ヶ岳まで、山々を一望しながら楽しい食事が楽しめる。
あつあつのご飯の上に薄くスライスした鶏肉をのせ、登利平自慢の「たれ」をまんべんなくまぶして召し上がる・・・。 ひとたび口に入れればお肉のやわらかさと、まろやかでコクのある「たれ」が調和して、上州の香りが味わえるこの一品。 JR高崎駅ビル・モントレー五階にも入っている。
アララギ派の歌人として万葉集の研究者として、大きな業績を残した土屋文明。窓外に目をやれば、歌人の感性を育んだ原風景が広がります。展示では、100年にわたる文明の生涯を「ひとすじの道」としてたどり、その生涯と作品、関係の文学者などを時代を追って紹介します。